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軍国少年の半世紀、そして結局...
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 5月に「クルドの事件:僕はこれを惨殺とは言えません 」でクルドのリンチを紹介しました。
 この事件は16才の女の子が駆け落ちをした、つまり婚外の男と性行為をした結果、石投げのリンチで殺された、こんな事件でその動画がこれですが、感覚的には酷いとは思いつつも不思議に責められないんですね。
それはおそらく、これが彼らのルールだから、そういう思いがあるからでしょうが、その淵源を辿ってみると映画「アラビアのローレンス」に行き着くような気がします。

 いうまでもなくこれはデビッド・リーンの大作映画であり、キャストもアレック・ギネスピーター・オトゥールオマー・シャリフホセ・ファーラーっと恐ろしいほど豪華な作品なんですが、見所はなんといっても砂漠を駆けるアラブ連合の騎馬軍団の大スペクタクル、そして色彩美こんなもんじゃないかと思うんですが、この映画の中でピーター・オトゥール演ずるローレンスとオマーシャリフが演ずる、ローレンスの一番の協力者である族長アリが最初に出会う砂漠のシーンだったような気がする。

 このシーンは、使命を帯びてファイサル王子(アレック・ギネス)のキャンプに向かったローレンスと道案内のベドウインが、途中井戸を見つけて水を飲むシーンなんですが、水を飲んでる最中にこのベドウインがなにかを見つけて怯え出すんだな。
ローレンスは、彼が異様に怯えているのはわかるんだがなんでかわからない。
これは視力の差なんだけど、ベドウィンの男にはローレンスには見えない程遙か彼方から黒い馬に乗ってやってくる別のベドウィンが見えたんだね。

 芥子粒ほどの大きさで見え始めたところでその黒い馬が止まる、そして銃声の暫く後にこの道案内のベドウィンは打ち抜かれて地面に倒れる。
やがてこの黒い馬の男はローレンスの側にやってくるんだけど、これがアリ。
ローレンスは猛烈にその非道を糾弾するんだけど、アリは毅然として「これが砂漠の民ベドウィンのルール、水泥棒は殺す」というようなことを言い放つ。
つまり、この井戸は族長アリのテリトリーの井戸だった、それを他の部族のベドウィンが無断で飲んだことに対する制裁、それがこの銃殺であったわけですが、こういうことを西欧的価値観をもとに理不尽だと憤りながらも、ローレンスは時間と共にだんだんそれに従ってゆくんですよ。

 でその仕上げというのも変だけど、ローレンスがそのハードルを完全に乗り越えるのが、彼がかわいがっていた孤児2人の内の1人ガシム、この少年はアカバ攻撃の際の夜間行軍で居眠りした挙げ句にラクダから落ちて砂漠に取り残され、危うく脱水死するところをローレンスが助け出し、これでローレンスはベドウィン社会で認知されたんだけど、ファイサルの本営に向かう途中で合流した他部族(族長がアウダ(アンソニー・クイン))のメンバーといさかいが起きた際にガシムが相手を射殺しちゃう。

 ここから先は泣いて馬謖を斬るの世界なんだけど、ローレンスがベドウィンのルールに従い彼自身がベドウィンとしてガシムを銃殺するんだな。

 ローレンスに関しては色々と毀誉褒貶はあるんだけれども、この映画のローレンスは、こうしてベドウィンの文化を尊重し、ベドウィンになりきってゆく。
結局最後には、その文化の差異にローレンスが裏切られて終わる、このダマスカスの夜のシーンってのは陰惨なんだけど、ここをオマーシャリフ演ずるアリが好演しています。

 さて、石投げの死刑ですが、まぁそんな感じで僕は一概に野蛮だとか言えませんが、その石投げの死刑の本格版が5年ぶりにイランで執行されたそうです。
 これは初めて知ったんですが、司法当局は2002年の後半に石投げで死刑を執行することを禁止する布告を出しているんだそうですが、これに対してはその都度マスコミや人権活動から非難が沸き起こっていた、そして今回執行された死刑囚は、実は2002年の布告で執行を停止されたその人らしい。

 石投げの死刑の執行手順に関しては

When carrying out the stoning, a male convict is buried up to his waist with his hands tied behind his back, while a female offender is buried up to her neck with her hands also buried.


とありますから、男性の死刑囚は後ろ手に縛られて腰まで埋められ、女性の死刑囚やはり後ろ手に縛られて首まで埋められる。
そして群衆が石をぶつけまくって殺すわけですが、この男女における腰までと首までのさはやはりなんか宗教的な浄・不浄の観念による括り分けなんでしょうね。

参照記事
Man stoned to death for adultery
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