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軍国少年の半世紀、そして結局...
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 昨日付のフィナンシャルタイムズの記事の「Pyongyang thrives on America's constant concessions」というなんともシニカルというかアイロニカルというのか、ま、そんなタイトルが目にとまった。
で誰が書いたかと思って中身を見たらなるほど、戦略国際問題研究所日本部長で元国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長、ジョージタウン大学準教授のマイケル・グリーンだった。(爆

 全体として、今コンドリーザ・ライスが進めている対北妥協策をこっぴどく批判する内容なんですが、ほかの保守派の批判と大きく違うところは、

By compromising on money-laundering, we risk damage to other interests, such as our ability to hinder North Korean procurement of materials for its nuclear program, our authority on human rights and the credibility of our defence commitment to Japan, where there is considerable unease about this course.
(資金洗浄について妥協することによって、我々は他の利益(たとえば北朝鮮が核開発計画のための資材を入手することを防ぐ能力であるとか、我々の人権戦略に対する権威であるとか、日本防衛における責務の信頼性だが)を危険にさらすのであり、そうした無視できない不安がこの方針にはある。)

日米間の信頼関係に対する懸念に言及していることですね。

 暫く前から海外メディアでは既に動き出したかのような筆致で「アメリカが北朝鮮をテロ支援国家から除外」と書き立てているわけですが、しかし、ここ数日のアメリカ国務省やホワイトハウスのブリーフィングを見る限りでは、対北妥協積極派である国務省と消極派・懐疑派の綱引きは続いており、後者の期待を一身に担っておるのが財務省だと、こんな感じのようです。

 先週のワシントンタイムズの記事「U.S. bank helps clear hurdle to shut reactor」には

- The highly unusual decision to let North Korean money labeled by the Treasury as "dirty" be deposited in a U.S. bank -- entailing full access to the international financial system -- was made by Secretary of State Condoleezza Rice and Treasury Secretary Henry M. Paulson Jr., officials said.
財務省によって汚い金であると判定された北朝鮮の金を、国際金融システムに対する十分なアクセス能力を持ったアメリカの銀行に寄託するというこの高度で例外的な決定はライス国務長官とポールソン財務長官によってなされた、と当局者は語った。

- Mr. Paulson is said to have agreed with Miss Rice because he does not want to risk his good relations with Chinese officials.
ポールソンは、彼の持つ中国当局者との良好な関係を危険にさらしたくないのでライスに同意したと言われている。

 という記述があり、僕は絶望的な気分になったんですが、ポールソンはさておき、現実の財務省はまだパトリオット法を引っ込めはしてないようです。
このマイケル・グリーンの論説にも

Now hapless US Treasury department officials are being forced to try to find a bank that will accept a wire transfer of the money.

とありますが、国務省にしろ財務省にしろ、いくら引き受け手の銀行を探したところで、パトリオット法の適用除外を明言しない限り誰も引き受けないわけで、これまで幾つかの銀行の名前が挙がったわけですがどれもポシャった。
そして今ワコビアの名前が挙がってますが、ワコビア自身がパトリオット法の適用除外が条件であることを明言していますから、ワコビアで行くことが決まったときにはそうなったとき、つまり、北朝鮮が実質的にテロ支援国家から外されたときだと言えると思います。

引用元「Envoy eyes visit to N. Korea」
"We take any request for assistance from our government seriously and endeavor to cooperate whenever possible," said spokeswoman Christy Phillips-Brown.
"Wachovia complies with all laws and regulations and would not agree to any request without appropriate approvals from our regulators." In her statement, she referred to "an interbank transfer of funds held at other banks." Asked whether the money would be coming from banks other than Banco Delta Asia, she declined to comment.


 そしてマイケル・グリーンはこうも言っている。

- North Korea hands often note that Pyongyang does not negotiate under pressure, but experience shows that they do not negotiate without pressure.

- The North does not want to abandon its nuclear weapons and diplomacy will never be easy, but we should make sure our diplomats have a full tool kit to get the job done.


 北朝鮮と交渉するためには圧力が不可欠であることは経験的に明らかであり、核を捨てたくない北朝鮮に核を捨てさせるという困難な外交を強いるんだから、外交官には完全なツールキットを持たせておかなくてはならない。
こんな意味かと思いますが、明らかにライス・ヒルの路線に対する批判ですね。

 この記事にしても5月8日のワシントンポストの社説「Waiting on North Korea」にしても、保守派を中心とする対北妥協に懐疑的な勢力はまだ頑張ってはいるようですが、残念ながら、政権中枢を去った人が多い。

 さて恒例の国務省ブリーフィングですが

QUESTION: According to the Washington Times today, Chris Hill trip to Pyongyang next month. Can you confirm?
MR. MCCORMACK: No, he has no plans at this point to travel to Pyongyang. We -- what he's looking forward to now is seeing the BDA issue in our rearview mirror and then getting back to the six-party talks in Beijing. So that's his immediate agenda on the horizon, but he has no travel plans at this point to go to Pyongyang.
QUESTION: Thank you.


この件に関するやりとりはたったこれだけです。
質問者は、ワシントンタイムズ「Envoy eyes visit to N. Korea」の中で、クリストファー・ヒルが来月にも次の手順を話し合うために平壌に行くというような観測を書いており、それが間違いないかを質問しているんですが、マコーマックは、我々はBDA問題が過去の話になることを待望しているが未だそういう状況にはいたらず、従ってヒルの訪朝もメニューにはない、こんな回答をしています。
要するにワコビアもパトリオット法でデッドロックに乗り上げているということだと思います。

 そして、我が国のエセ保守は”アメリカに対する懐疑を鳴らすことは北朝鮮の日米分断工作に乗るものだ”というようなアホなことを言うわけですが、アメリカの政権内でも意見が割れている今、声を出さなければ前のめり派に力を与えることになると思いますね。
エセ保守の言うことは全く逆の結果しかもたらさないし、アメリカの前のめり派の工作に乗ることにしかならない。



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